買いたくなる理由を科学的に理解できる本

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書評 影響力の武器

影響力の武器

著者:ロバート・B・チャルディーニ(アメリカの社会心理学者)
翻訳:社会行動研究会
出版:株式会社 誠信書房

「商品が品薄状態になっていたので、つい買ってしまった」
「買う気はなかったのに、ネットで英会話教材を購入してしまった」
など・・・。

誰もが経験したことがありそうな行動を科学的に分析してみようという本です。
日本語としては回りくどい表現が多い印象がありますが、内容は面白いです。

ドナルド・トランプ氏の交渉術

本の中で紹介されている交渉の技術の一つに

拒否させた後に譲歩する

というものがありました。
これはある要求をどうしても受け入れさせたい時に使う手法です。

まず、受け入れさせたい要求よりも大きな要求を相手に突きつけます。相手がそれを拒否した後に、それよりも小さな要求、つまり本当の要求を提示します。

例えば、あなたが100万円のサービスを販売したい場合、まずは200万円のサービスを提案することから始めるのです。それを拒否した相手に対して今度は100万円のサービスを提示する。つまり、相手に譲歩した形での提示になるわけです。

相手は、はじめから100万円の提示を受けるよりも断りにくい心理状況になっています。加えて、譲歩してくれた相手に対して自分もバランスを取ろうとします(相手も譲歩したのだから、自分も譲歩しようとする)。これによって、交渉が成功する可能性が高まるというわけです。

まずは大きな要求を叩きつける手法、ドナルド・トランプ氏の交渉手法そのもののような気がしますね。

コミットメントの影響力

もう一例。

ひとたび決定を下したり、ある立場をとる(コミットする)と、自分の内からも外からもそのコミットメントと一貫した行動をとるように圧力がかかる。

次のような具体例があります。

馬券を予想している段階では自分が予想している馬の勝敗にそれほど熱くならない。が、予想した馬券を購入(コミットするのと同じ意味)してしまうと勝つことへの期待感が極端に大きくなる、というような感じです。

おもちゃ屋さんがこの法則を使って売り上げを倍増させているケースが紹介されていました。

クリスマスに向けて、あるぬいぐるみを大々的に宣伝する。子供はそのヌイグルミをほしがり、親はクリスマスにプレゼントする約束をする。

が、メーカー側はあえて生産量を減らし、ほとんどの人はヌイグルミを買うことができない。違うものを購入しクリスマスを凌ぐが、その後、ヌイグルミも購入することになる

というものです。

最初のクリスマスにヌイグルミをプレゼントするという約束がコミットメントになっているわけです。

このコミットメントを守るために、クリスマスにぬいぐるみ以外の商品をとりあえず購入し、その後約束を果たすためのぬいぐるみを購入する。これで売り上げが2倍になるという理屈です。

他にもいろんな行動に対する科学的な分析がされていて、楽しみながら読める一冊になっています。ご興味をもたれた方にはオススメの一冊です。

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